「それは、まるで、夢のよう」(お試し読み版)
▼眉村x吾郎※大人向け

眉村健は、自分は夢を見ない方だ、と常々から思っていた。
昔から、特にこれといった夢を見た記憶が無い。よくよく考えれば、無いこともないのだが、そんな時に思い出す夢に限って『走っても走っても一向に近づかないゴールテープを目指して、ライオンの運転するライオンバスに追いかけられる夢』だとか。『死ぬほど甘い生クリームの海で溺れかける夢』だとか、冗談でも“楽しい”なんて言える代モノではなかった。
そんな訳だから、夢見が良くて嬉しかった経験など、眉村にとっては思い出すだけ無駄な行為だ。


だから、夢に何か意味を持たせたり、ましてや願ったりする事なんて、考えてもみた事はない―――はずだった。



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はっ、と漸く息をつけたと思ったのに、次の瞬間また塞がれる。
緩く開いた唇の間から、温かく柔らかい感触が滑り込んできた。絡む舌と呑み込まされる体液に上手く息が出来なくて、無意識にのし掛かる眉村の肩の辺りを強く握りしめる。
柔らかく唇に歯を立てられて、背中にぴりりとした刺激が走った。
「ふっ・・・ん」
眉村の肩を掴んでいた手が、水気で滑って慌てて掴み直す。そうして吾郎は、眉村がまだシャワーの水気を良く拭いていない事に気がついた。ただ、この時はその感触に『そういえば、眉村のやつ部室に来た時、上には何も着てなかったなぁ・・・。』等度、深まるキスにうっとりしながら吾郎も考えていたのだが、


(え、あ・・・部室?・・・部室って・・・!?)


次の瞬間、唇を合わせる眉村をもぎ離すようにして吾郎は怒鳴った。
「ちょ、眉村、待て!ここ、部室だって!!何考えてんだよ、マズイだろ!」

【続】